業界経験者向け情報

「農業×IT」で農家さんをパワーアップ! ~高知のIT活用プロジェクトインタビュー~

農業、教育、観光…高知では、ITを活用して変革を起こしている人やプロジェクトがいくつもあります。

今回は、「農業×IT」で農業現場でのIoT機器活用を支援している合同会社Office asoTの松本さんと和田さんにお話を伺いました。

農業分野でのIT活用に興味がある方、異業種でチャレンジするエンジニアの方には参考になる内容ですので、ぜひご覧ください。

 

お二人のプロフィール

合同会社Office asoT 代表社員 松本 貴也さん

高知県高知市生まれ。

中小企業のSE(システムエンジニア)からWEBエンジニア、UI/UXデザイナーを経て、2019年2月に合同会社Office asoTを設立。農業分野におけるAI・IoTを用いたサポート技術の研究・開発を主に活動中。
農業の現場を経験したくて、2018年夏から2020年1月まで宇佐のピーマン農家さんでアルバイトを経験。

 

合同会社Office asoT 和田 英爵さん

京都府京都市生まれ。

製造業(電車車両メーカーの下請け)に勤務し配電盤制作などを経験。2019年8月に合同会社Office asoTの一員となる。

農業分野におけるIoTを用いたサポート技術の開発や電気工事士の資格を活用したUECS分野での設計、組立、現地施工に携わる。農業を知るために宇佐のピーマン農家さんに弟子入り、研修中。休みの日は趣味の釣りを満喫している。

 

異業種から農業分野へチャレンジ!その背景とは?

ハウス内で農作業する和田さん

 

— お二人が「農業」という異業種にチャレンジした背景を教えてください。

松本さん:前職の時、農業技術センターの方と出会い、「ピーマンの花数実数を数えられないか?」とお声がけいただいたのが始まりです。結局その事業は頓挫してしまいましたが、もっと深くやりたかったので、農業技術センターの方に繋いでもらって、農家さんに弟子入りすることにしました。

「早速農作業ができる!」と思っていたのですが、現場に行ったのが夏だったので、まずはハウスの修繕作業からでした。2ヶ月間、作物と触れ合うことがなかったです。

 

— 和田さんはいかがでしょうか?

和田さん:元々は、京都で配電盤などの機器を作っていましたが、松本さんから誘われて興味を持ち、高知に移住しました。私も農業の現場を知りたいと思い、農家さんのところに弟子入りをしました。

お世話になっている農家さんは、珍しいと思うんですけど、植物に関する最新の論文を読んで、植物にとって最適な環境を作り出し、理想の状態に持っていくことができる方です。

今ではどっぷり農業にハマり、知識もついてきたので、農家さん目線での提案が出来るようになりました。

 

— 農業って長年の勘がすごく大事で、若い人には難しいと思っていましたが、科学的に制御できるのは面白いですね。

 

農家さんに寄り添うサービスを提供する

— 現在の活動内容を教えてください。

松本さん:施設園芸で作物を育てるにはハウス内の温度、湿度等の環境を理想の状態に持っていく必要があります。

これを「環境制御」というんですが、「環境制御」を実現できるシステムとして「UECS※」があります。

この「UECS」を用いてハウス内にある各機器を制御する装置を作製するサービス「make-farm」を実施しています。このサービスで、農家さん自らが装置を自作・活用できるように支援しています。

※ ユビキタス環境制御システム(Ubiquitous Environment Control System)のこと。https://uecs.jp/uecs/uecs-1.html

 

和田さん:環境制御では、IoT機器の入った箱をハウスに設置し、LANケーブルでパソコンにつなぎます。温湿度センサーや日射計などが「Raspberry Pi」などを経由してハウスの加温機や潅水(水やり)装置と繋がっています。

例えば温度が一定以下になると自動で加温機が起動し、ハウス内の温度を適切にコントロールすることができます。その様子をパソコンのWeb画面で参照したり、直接操作することができます。

ハウスの中に機器を設置している様子

 

和田さん:このように、IoT機器でさまざまなセンサーを接続し、ハウスの中の環境データをインプットにして、ハウス内の機器(天窓、潅水用のポンプ、湿度を保つミストなど)を動かすのが環境制御システムになります。エアコンでもケトルでも、なんでも接続できますよ。

松本さん:人間も、湿度が低かったら乾燥して喉が痛くなるので、加湿をしますよね。それと同じで、植物が一番パフォーマンスを出せる状態を作り出すんです。

 

— なるほど!でも確かに、農家さんにはハードルが高そうです。

和田さん:そうですね、実際に導入するとなると結構ハードルが高いです。例えばコストが高いことがあります。メーカーが出している環境制御キットは通常100万円ほどします。それがハウスの数だけ必要になるので、中小規模農家さんだと導入が難しいのが現状です。

必要なIoT機器を組み合わせて環境制御システムを作成できる「UECS」だと、40万円くらいでできるので、農家さんも導入しやすいです。

機器の組み立てサポートの様子。農家さんがマニュアルを見ながら自作しています。

松本さん:その代わり、インプット・アウトプットを自分たちで設定しないといけないので、IoTに慣れていないと難しいです。更に、最適な環境はそれぞれのハウスや植物によって異なるので、細かい調整が必要です。

それを農家さんができるように、機器の設定などを実施、サポートしています。

 

和田さん:環境データを見なくても栽培はできるのですが、もっと収穫量を増やしたい、もっと稼ぎたいという農家さんは、環境データを活用して環境制御をするのがスタンダードになっていますね。

— 稼ぐのにも生産性アップにも必要な環境制御ですが、多くの農家さんに導入してもらい、自分たちでできるようにサポートをされているのですね。

 

エンジニアとして関わっていく苦労と面白さ

 

— エンジニアとして普通にシステム開発をしていた時と比べて、農業特有の難しさはありますか?

松本さん:システム開発だと、まず開発環境で作ってテストをするのですが、農業はいきなり本番環境です。とにかくぶっつけ本番で、社内で動作確認したのに、ハウスではうまく動作しないということはたまにあります。

和田さん:植物を相手にしてるので、間違った設定などで枯らしてしまうと取り返しがつかないですよね。

 

— 植物も生き物ですもんね…。どうやってクリアしたのですか?

松本さん:最初はハウスの環境をモニタリングするだけで、制御はしないようにして機器の動作確認をしたり、知り合いの農家さんのところで影響のない範囲でテストをしたりしています。環境制御等の先行事例を参考にすることもあります。

 

— 小さく実験をしていく感じですね。逆に、エンジニアとして関わっていく面白さはどんなことでしょうか?

松本さん:IT業界出身ですが農家さんの現場に触れているため、実情、苦労を知っています。より農家さんに寄り添った提案を心がけています。

Pythonが書ければ、Raspberry Piを使って結構なんでもできるので、必要なものを作ってすぐ使ってもらえますね。

あと、私は元々、UIUXが専門なので、もっと農家さんに使いやすいものにしていきたいです。環境制御のデータが見える画面も、もっと見やすく簡単にしたいです。

 

— 農家さんと同じ目線で、必要なソリューションを提供できるのは強みですよね!現場の声に基づいてサービスを作れる、喜んでもらえるのがそばで見れるのはエンジニアとしては面白いことだと思います。

農家さんが参加する勉強会も開催されています

 

— 最後に、IT業界から農業に関わっていきたいと思う方に向けてアドバイスいただけますか?

和田さん:まずは現場に行って、汗かかないとだめです。全ては農業の光と闇を知ってからですね。

先入観を持って入ってくる方が多いですが、大変なこと、楽なことをしっかり知らないと、思ってたのと違うので本人も苦しいですし、農家さんと話すときに信頼関係を築けないです。現場を踏まえた発言ができるかで、信頼が全然違ってきます。

松本さん:農業技術センターに行くだけでもイメージが変わると思います。

和田さん:農業は本当に大変です。それでもやり続けているのは、「やりがい」というか「探究心」だと思います。「これをやったらこうなるのかな?」の積み重ねを実践している農家さんの所で修行をしているので、常々そう思います。

 

— まずは現場を知ることですね!面白いお話をありがとうございました。

 

まとめ

農業とは違う分野出身のお二人。まずは現場で農業の光と闇を知り、農家さんの声から生まれたサービスを提供されているとのことでした。

テスト環境のない農業現場で、少しずつ試しながらサービスを作っていくことができるのも、現場経験から得た知識と信頼関係で成り立っているというお話が印象的でした。

「ITの力で生産性の高い、稼げる農業を作っていく」という高知の未来と、エンジニアとして関わるワクワク感を感じられる取材となりました。

 

高知県では、ITを活用した面白い活動がいくつもあります。「高知家IT・コンテンツネットワーク」では引き続き情報発信をしていきます。また高知の活動に詳しいスタッフに個別相談をすることもできます。

地域課題に興味がある方、IT技術を用いてアプローチしてみたい方はぜひご登録いただき、活躍できる場を探してみてください。

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主催:高知県商工労働部産業デジタル化推進課

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