高知家のIT~Work from KOCHI~

2023.10.12

充実した今を生きる。成功の秘訣は「2段階」(株式会社とさごころ:大道里奈さん)

関東で7年間、日系航空会社に勤めていた大道里奈おおみちりなさん。その後、高知県へ移住し、現在は「株式会社とさごころ」で地域観光コーディネーターとして活動されています。

今回は、そんな大道さんに高知での働き方や暮らし方について伺いました。

■プロフィール

岐阜県出身。高知県佐川町在住。日系航空会社に7年勤務した後、2020年に高知県へ移住。宿泊施設にて勤務する中で、InstagramやLINEを活用した顧客接点の拡大や、英文宿泊マニュアル・スタッフ向けの英語接客例文集などを作成。現在は、株式会社とさごころにて、台湾・香港向けのプロモーション事業を担当。認知度向上のための情報発信や、現地のパートナー企業と連携し、インフルエンサーを招請するモニターツアーやテレビ番組制作ツアーのアテンドを担うことも。その他、高知県の外国人観光客向けサイトのSNS運用等を行っている。

■仕事とプライベート…20代後半に訪れた人生の分岐点。

―高知に移住されたのはいつ頃ですか?

2020年2月に、神奈川県から移住してきました。移住当初は、コロナ禍でイベントごともなく、地域との接点も少なかったのですが、今年はよさこいも開催され、高知暮らしを楽しんでいるところです。

―移住のきっかけは何だったのですか?

夫が先に高知へ移住していたことです。元々は神奈川県で2〜3年ほど一緒に暮らしていていました。当時、夫は大学に務めていたのですが、自分がやりたいことを見つめ直し、実現できる場所を探していました。そんな時に、高知県佐川町の地域おこし協力隊の募集を見つけました。「さかわ発明ラボ」という施設で、地域のこどもたちにものづくりの楽しさを感じてもらう場や、のびのびと発想できる場を提供するというものでした。たまたま見つけたこの募集は、夫がやりたいこととマッチしていたため、2018年に佐川町の地域おこし協力隊として先に移住することになったんです。

―縁もゆかりもない高知へ旦那さまが単身移住…当時はどんな心境でしたか?

これだけ聞くとびっくりしますよね。夫の後を追ってついて行くことも考えましたが、当時、航空会社に入社して5年が経ち、仕事への責任とやりがいが高まっている時期でした。仕事と暮らしを天秤にかけた時に、もう少し今の仕事を頑張りたいと思い、私は神奈川県に残ることを決めたんです。とはいえ、お互い自然が好きでアクティブなタイプなので、将来的には自然が身近に感じられるような環境で暮らしたいという共通の価値観を持っていましたね。正直、夫の移住に関しては、「いってらっしゃい」くらいの感覚でした(笑)

―大道さんの寛容さと言いますか、お人柄が伺えます。その後はどのような生活を?

お互いにやりたいことは尊重したいと思っています。

夫が移住してからは、2カ月に1回のペースで高知に遊びに行っていました。よく聞く話ですが、高知はすごくオープンで、県外から来た人を受け入れる土地柄がありますよね。神奈川県から何度も通っているうちに、本当にそうなのだと実感しました。回を重ねるうちに地元の方々との交流が増え、徐々にコミュニティが広がっていきました。

その後、約1年間の別居生活を経て、私も高知へ移住することになったのですが、移住前から現地でのコミュニティが確立していたのは本当に大きかったなと思います。最初は、少し遠出の「おでかけ」感覚で高知に足を運んでいましたが、気づいたら地域に溶け込んでいる自分がいて。1年が経過する頃には、半分「高知の人」になっていましたね(笑)そのおかげもあって、移住するときの不安はありませんでした。当時はあまり意識していませんでしたが、現地に何度も通うことで、移住に対する漠然とした不安を段階的にクリアしていたのだと思います。

■仕事探しも段階を踏んで。株式会社とさごころとの運命的な出会い。

―現在お勤めの「株式会社とさごころ」との出会いを教えてください。

実は、高知に移住して最初は宿泊施設に務めていました。それまで、ずっと走り続けて仕事をしてきたので、一度立ち止まりたい時期でもあって。サービス業という前職の経験を活かしつつ、全く別の業種に振り切って働いていました。そこで1年ほど働いているうちに、高知が持つ観光資源のポテンシャルの高さに気づき、もっとその魅力を多くの人に伝えたいと思うようになりました。

そんな時、ネットで情報収集していたところ、たまたま「株式会社とさごころ」の求人を見つけました。弊社の前身である「株式会社やまとごころ」が、これまで取り組んできた日本全国のインバウンド観光のノウハウやネットワークを活かし、高知県に特化した会社として「株式会社とさごころ」を設立した時期だったんです。航空会社に務めていた頃から、海外からのお客様の接客をする機会が多かったので、これまで培ったスキル・経験を活かすことができる仕事はこれしかないと思いました。その後すぐに、とさごころ一本に絞って応募しましたね。

―なるほど。運命的な出会いだったのですね!ネットで情報収集する際に意識していたことはありますか?

自分のスキル・経験をそのまま活かしたいと思うのは当然だと思いますが、あまり最初から条件を絞り込みすぎるのはおすすめしません。実際に、私は「語学力」「接客」といった、前職で培ってきたスキル・経験を直接活かせる仕事を探していたのですが、正直ヒットする求人は少なかったです。以降は、未経験の職種でもやってみたら楽しいかもしれない、その中で何かやりがいを見つけられたらいいなというスタンスで情報収集するようにしていました。可能な範囲で間口を広げることで、意外な出会いや新たな発見があると思います。

―大道さんは今、具体的にどのようなお仕事をされているのですか?

現在は、台湾・香港向けのプロモーション事業を担当しています。主な業務は、高知の観光や特産物をより多くの人に認知してもらい、実際に現地を訪れてもらうための情報発信です。加えて、台湾・香港などの現地パートナー企業と連携したテレビ番組や雑誌の制作、インフルエンサーやメディア向けのモニターツアーのアテンド、高知県の外国人観光客向け情報発信サイト「VISIT KOCHI JAPAN」の運営なども担当しています。最近は、現地で外国人観光客のアテンドをする機会も増えました。

―働き方が180度変わったのではないですか?

そうですね。それこそ、とさごころに転職し、初めてデスクワークを経験しました。気がつけば、今までずっと接客畑にいて、対人で仕事をしていたんです。とさごころに入社した頃は、ちょうどコロナ禍でリモートワークが浸透し始めた時期でもあったため、正直最初は不安もありましたし、戸惑いました。しかし、オンラインで簡単に繋がることができますし、案外何事もやってみると何とかなるのだと思いましたね。現在、入社して1年7カ月目になりますが、随分と慣れて今では支障なく働くことができています。

―1日の大体のスケジュールを教えてください。

基本的に9時〜18時勤務です。ルーティーン業務は特段なく、その時々で業務内容は異なります。最近は、週2〜3回は出社し、残りの日はリモートワークという感じですね。ときどき出張が入ることもあるのですが、現地からオンラインで繋ぎ、普段と変わらず仕事をしています。今ではもう定着しつつありますが、改めて、場所にとらわれずに仕事ができるってすごくありがたいことだと思いました。

■高知のインバウンド観光は伸びしろしかない!

―高知のインバウンド観光について、大道さんはどのように感じていますか?

海外の方々を見ていると、「高知でしかできない経験や日本の田舎らしい暮らし体験」を求めて来高される方が多いように思います。その他、自然のアクティビティや高知ならではの食、お遍路など、さまざまな目的を持った方が訪れます。欧米の方は、地域ならではの伝統物など、こだわりが詰まったストーリー性のあるものを好む傾向があります。一方で、アジア圏の方は、写真好きな方が多く、いわゆる映えスポットや自国にはないその土地ならではの景色を好む傾向があります。このような国による趣味嗜好の違いを考慮し、試行錯誤しながらプロモーションしていくことが重要だと思いますね。

高知のインバウンド観光はまだまだ伸びしろがあるため、これから更に加速させたいです。観光地としてメジャーではないかもしれませんが、だからこそ、「日本の中でもまだ知られていないところ」という特徴を、逆転の発想で強みに変えることができると思います。

―なるほど。高知には「勝てる要素」がたくさんあるということですね。そんななかで、大道さんは普段どんなことを意識していますか?

インバウンド促進には、「外からの目線」の客観的な俯瞰力が必要だと思っています。地元の人からすると当たり前と思っていることが、外の人からすると特別だったりもします。「外からの目線」を取り入れることで、当たり前として地域に溶け込んでいたものが、観光資源として強みに変わる可能性だってあると思います。高知に来て3年が経ちますが、いつまでも初心を忘れず、移住者としての目線を忘れないように意識しています。

 

―やはり、語学力は必須なのでしょうか?

ずば抜けた語学力が必要という訳ではないと思います。それよりも、自らコミュニケーションを取りにいこうとする姿勢が大事だと思いますね。たとえカタコトだとしても、ボディランゲージで伝えたり、最近は翻訳機も発達していたりと、できることはたくさんあります。

高知の人は世話好きで、自ら率先してコミュニケーションをとろうとする人が多いと思うので、インバウンド業界においてとても相性がいいと思います(笑)

 

■暮らしも仕事も充実。気になっている人はまず現地に来てみるのがオススメ!

―高知での暮らしはどうですか?

田舎へ行くと収入が減るという話をよく聞きますが、むしろ高知に来て生活は豊かになりました。自然のアクティビティが身近にあって、お金を使わずとも遊べる場所が多かったり、自分で育てたお野菜や釣ったお魚をいただいたりと、充実した生活を送ることができています。ただ一つ、高知のおんちゃんの土佐弁だけは慣れるまで時間がかかりました(笑)最初は何度も聞き返すことが多かったのですが、徐々に耳が慣れていきましたね。

―さすがのリスニング力ですね!ちなみに最近ハマっていることはありますか?

1年前に中古の平屋を購入したのですが、DIYで少しずつ理想の家を作り上げていくことにハマっています。今まではマンションにしか住んだことがなかったので、自分の手で住まいを作り上げるという工程がとても新鮮で楽しいです。徐々に仕上がっていく感じがたまりません。

―暮らしも仕事も充実している大道さんから、高知での転職や移住を考えている方へアドバイスをお願いします。

まず、迷っている方は一度現地に足を運んでほしいなと思います。そして、少し滞在することでWebでは分からない一面が見えてくるはずです。私も、移住前に何度も通ったことで、高知で暮らすイメージを明確に持てるようになり、結果、移住に至りました。観光がてら、是非一度高知にいらしてください!

また、会社側の視点で言うと、弊社は一般的なIT企業とは異なります。SNS運用や観光サイトの制作、現場でのアテンドなど様々な職種があります。高知のことが好きな人、高知の良さを誰かにシェアしたいという思いを持っている方には是非来ていただきたいなと思いますね。これから成長していく高知のインバウンド観光をチャンスとして見て、少しでも興味を持ってくれる方がいたら嬉しいです。

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